世界三大映画祭の常連であり、フランスを代表する映画作家のフランソワ・オゾン。本作は、常に新境地を切り開きながら唯一無二の個性がファンを魅了してやまない鬼才オゾンが、4年の構想期間を経て放つ極上の心理サスペンスだ。
双子の精神分析医のポールとルイという、似て非なる2人の男性との禁断の関係にのめり込んでいくクロエを演じるのは、『17歳』で売春に手を染める名門女子高生を演じ、カンヌを騒然とさせたマリーヌ・ヴァクト。そのクロエと心理的にも肉体的にも激しい駆け引きを演じる双子の精神分析医に、『しあわせの雨傘』のジェレミー・レニエ。また、ポールとルイの過去に関わる重要な役どころで、『映画に愛をこめて アメリカの夜』の名女優ジャクリーン・ビセットが出演している。
ひとりの男では満たされない欲望と幻想を、別の男に求めてしまう女の本質を露わにしながら、物語は数々の謎を散りばめ、観る者を幻惑の罠にからめとっていく。ラストに待ち受けるのは、観客すべての予想を覆す驚愕の結末。オゾンが仕組んだ大胆不敵なトリックを、あなたは見破れるだろうか?
悪魔のようなオゾン。
スリラーに見せかけたオゾンの新作は、
彼のミューズであるマリーヌ・ヴァクトへの
愛情に満ちたポートレートだ。
彼らの巧妙で退廃的な駆け引きを、
覗き見をしているような気分になる。
これまでの作品にはなかった、
冷徹なエレガンスさと臨床的な
的確さを持ったアプローチ。
オゾンはいつもの卓越した技巧で、
不安定で摑まえどころのない
女性の無意識の世界の演出に身を投じた。
オゾンは女性に対する
新たな研究を機縁に、
邪悪な二重性を構築した。
クローズアップで撮影された顔、
冷ややかな建築的なラインの美術、
全てが息苦しい。
潜在意識の迷宮の扉を開け放つ
この心理サスペンスには、
極めてヒッチコック風の何かがある。