クロエ
マリーヌ・ヴァクト
1991年4月9日、フランスのパリ生まれ。15歳のときにスカウトされてモデルのキャリアをスタート。イヴ・サンローランの男性用香水のキャンペーン・フィルムでヴァンサン・カッセルと共演し、同じくサンローランの香水パリジェンヌのイメージモデルも務めた。2011年には『フランス、幸せのメソッド』(未)で映画デビュー。2013年にフランソワ・オゾン監督の『17歳』の主役に抜擢され、世界中のメディアから絶賛された。パートナーはファッション写真家のポール・シュミットで、2014年に息子が誕生した。
COMMENT
かなり以前から精神分析の治療の経験を映画的に焼き直したいと思っていました。この映画では観客は、精神分析医が患者の話を聞くように、治療を追うようなっています。
クロエにとってルイは、ポールの前ではできない欲望とファンタズムを体験できる化身のように見ることができるでしょう。彼女のポールへの愛が、彼女の中の暴力的で成熟したセクシャリティを満たすことを妨げているのです。他者が私たちの欲望を完全に満足させることは決してできません。『2重螺旋の恋人』は本質的には精神的な物語を描いていますが、演出は建築的な構成で、シンメトリー、 反映、幾何学的なものを作用させ、美術も脳が考えを作り上げるように、何かが作り上げられて行く印象を与えるようにしています。
Profile『17歳』の撮影から4年経ち、私は子供も授かった。オゾンからその経験を糧にまた一緒に撮影するアイデアを貰った時は、とても興奮したわ。まずフランソワの脚本を読み、それからジョイス・キャロル・オーツの小説を読んだ。彼の行った脚色はとても自由で、両方を読むことでそれぞれを補いあえた。
クロエに二重の生活があるのは、恋人以外の人と喜びに溢れ、解放されたセクシャリティを体験するからよ。全ての人が二重生活への欲望があるとは思わないけれど、おそらく現実にそぐうための想像が必要なんだと思う。誰もが自分だけの自由な空間、秘密の花園が必要なのよ。
まずポールの場面から撮り始め、それからルイの場面を撮影した。順番にそれぞれの役に入り込むことができたので、この方法は完璧だった。撮影当初、マリーヌは僕によく言った。「ポールは退屈だわ。早くルイにならないかしら!」でも後で彼女は後悔することになる。「ああ、ポールが懐かしいわ!」ってね(笑)
僕の役割はポールもルイも信憑性があるように見せ、観客に様々な解釈の手がかりを与えることだった。ポールはクロエに嘘をついているのか? 彼は双子の兄弟と何かを企んでいるのか? 彼はクロエがルイとしていることを知っているのか? ポールとルイは本当に双子なのか? 僕は二人共、クロエに対して隠していることがあると思っているよ。